コンディーマーク
「バファリンかよ!?」
朝8時、部屋のベッドの上で
自分で自分にツッコんでみる。
いやいやいやそれどころか、おそらく
「半分以上優しさで」できてるぞオレって人間は。
マジでそう思うわ。
「あー誰かオレのこと褒めてくれないかなあ」
そんな甘えたことを言いたくもなってしまう。
ただ、時としてそんなオレの「優しさ」は度を超してしまい
相手のため、もしくは二人の関係のために
「よくないのではないか?」と自問することもしばしば。
ところが、残念ながらその「具合い」を自分で
「調節」することができないのだ。
だからいつもいつも楽しめるというわけでもなく、状況によっては
「疲れてしまう」といったことも当然起こるわけで。
ま、それくらいしか自分の「売り所」がないので
仕方がないと言えばそれまでなのだが。
火曜日の昼過ぎ、ソファーに横になってニッポンのTV番組
「そこまで言って委員会」を見ていたら、
前の日にソムタムで誕生日をお祝いしたMから
「ハロー」と電話がかかってきた。
「タムアライユウ(何してるの)?」
「ドゥーDVDティーバーン(家でDVD見てるよ)」
「ヤークパイイセタンドゥワイダイマイ
(伊勢丹行きたいんだけど付き合ってくれる)?」
「ダーイダーイ(いいよ〜)」ってな感じで、
ヒマなオレは彼女の買い物に付き合うことに。
本当は昼に用事があるはずだったのだが、その時点で
「ブッちぎられ」る可能性大であり、これが後の行動に
少なからず影響を与えることとなる。
彼女の欲しかったものはなんとニッポンの雑誌
某「Fine」であり、表紙にカトゥーン(だっけ?)の亀梨君が載っていた。
当然輸入物なので280THBと高価く、しかも
ニッポンの文字など読めぬはずなのにこんなものをわざわざ
伊勢丹の某「紀伊国屋書店」に買いにくるなんて、
「こいつひょっとしてハイソー(金持ち)か?」と勘ぐるオレ。
その後、ごはんを食べる時も
「何が食べたい?」と尋ねるとニッポン語で
「ヤーキーニーク♪」と言い、連れて行かれた韓国料理店の
マスターとも顔見知りで、どうやら「常連」の様子だったしね。
旅行代理店勤務の26才、シンガポールとタイとの
「ルーククルン(ハーフ)」で、行きつけの韓国料理店をつM嬢。
「ニッポン贔屓」なのは確かであり、過去のカレシもやはり
ニッポン人が何人かいたとのこと。
「ホンダは元元カレに似てるんだよね〜」という、ちょっと
危険な発言に続き、元カレとは四年近く付き合い、結婚も視野に
かなりのところまでいったのに、いろいろあって数ヶ月前に結局
「お別れてしまった」というなかなか重い話を聞かされる。
「トイ(叩く)」とか「ゴーホックボイボーイ(しばしばウソをつく)」
だったという元カレを責める口調の彼女に向かって
「うんうんそれはよくない。よくないね〜」と深く頷くのみだったが、
「チョープコンディー。マイチョープコンロォー」
と、話を締め括った彼女に対し、
「てことはオレの出番か?」などと
勝手に勘違いするお調子者のオレ。
直訳すれば
「いい人が好き。イケメンは好きぢゃない」ということになるが、
コンディーとは「優しい」という意味にもとれるし、辞書にもそうある。
「優しい人がいい」のならば....と都合良く解釈して、つい
「いただき!」と思ってしまうのである。
つまり、仮に相手が正直に答えるとするならば
「チョープコンロォールゥチョープコンディー
(イケメンと優しい人どっちが好き)?」
という質問はものすごく有効な判断材料となるわけで。
さてさて韓国焼き肉はなかなかウマかったが、
思ったより高くもなかった(730THB。割り勘ね)。
お腹いっぱいになり、それぞれの待ち合わせ場所が近かったので、
ついでにMをタノンカオサンまでバイクで送る。
「女子を後ろに乗っけて」運転するのはもちろん基本的に楽しいが、
昼間や夕方の渋滞中はけっこうしんどいものがある。
二人分の体重を腕力で支えつつ、
車の間を縫って走らねばならないからね。
パンガン島行きのジョイントチケットの価格を調べた後彼女と別れ、
若者が集まる近くのタラートでK君達と合流し、小雨の振る中
ショッピングを楽しむ。というか買うもののないオレとしては
人間ウォッチングの方がよほど面白いのだが。
で、いつものように某「テーメー」に出勤(?)してから
「soiカウ(ボーイ)」に流れて、二軒の店で軽く飲む。
時間が遅かったせいかオレのお気に入りのコ達はいなかったが、
17才と20才前後のカワイコちゃんを二人見つけた。
再び「テーメー」に戻り、入り口付近で女子連中と話していると、
毎日のようにいるWちゃんと一緒に、さっき別れたMがいるではないか。
途中で電話があって「どこにいるか」と聞かれた時、
「アソークにいる」とだけ答えたのだが「偶然」なのかそれとも
「見つかった」のか、よくわからない。
「こうなったら今日は彼女にトコトン付き合うか」と思ったのが
「運のツキ」だったのだが、すでにけっこう酔っていた彼女は、
「テーメー」のルールなどまったく知らぬ様子で、近くに座っていた
キャップを被っているニッポン人の若い男のコを見て、
「ホンダー。あのコタイプだから紹介してよ〜」と、オレに頼んでくる。
「いやいや。ここはお金が発生するルールだから
そんなことしたら(ウリと)勘違いされちゃうよ」と、いくら説明しても、逆に
「お金払ってもいいから」とか「ただ友達になりたいだけ」などと、
全然言うことを聞かない。
「どうせ酔っぱらいの戯言だろう」と相手にしなかったら、いつの間にか
Wちゃんと二人でどこかへ行ってしまった。
しばらくしてから電話したら「ディスコにいる」というので
K君と二人、朝までやっているという
「BOSSY」へ向かう。
それにしても、
あれだけ深く酔っぱらっている女子を久々に見たなあ。
昔、店をやっている頃は頻繁にあったが、
タイに来てからは初めてだった。
実際、オレも含めて四人ともかなり酔っぱらっており、
かなりいい気分で「次行くぞ〜♪」と叫ぶ女子連中を引き連れ、
もうひとりオマケの女子も含めた女子三人男子ひとりの計四人を、
オレの部屋まで「アウマー(持ち帰る)」したわけだ。
タクシー内でも大騒ぎは続くが、すでに
「電池が切れたように」ぐったりしていたMは、家について
降りた途端、アパートの庭に置いてある植木の根元に
「ヴェーーーーーヴェーーーーー」とやり出した。
「これはマズいなあ」と思いつつなんとか部屋まで運び、
とにかく音を欲しがるWちゃん達のためB.G.Mをセットした後、
トイレの中でずーっとMの背中を摩るハメになった。
酔っぱらって「ゲロゲロ」の女子を介抱したことは何度もあるが、
自分もすっかり酔ってテンションが高い時などは、
「ああ、今こんなにイイ気分なのに何故オレがこんなことを」
と、恨めしく思うこともあるのだ。
トイレとベッドを往復する度Mに付き添うオレを見て、
「ホンダーコンディーマークナー(メチャ優しいやん)!」
と言うWちゃんと、その合間にエロエロダンスを繰り広げる。
彼女はけっこう細いのだが、踊りがかなりセクシーなのだ。
すでに7時近いというのに、「もうこれが限界だろう」というほど
相当デカイ音でテクノ系の音をかけながら踊っていたが、
「ダメだ。こんなんぢゃ我慢できない。もう一軒ディスコ行こーーー♪」
と、めちゃめちゃテンションの高いW嬢。
なんと11時まで営業している店があると聞き、本音は
オレも行きたかったが、まさかMを放っておくわけにもいかず
二人を残してみんなで出掛けてしまった。
いや、それにしてもスゴいパワーだな。マジで。
数十分トイレに引き蘢る間ずーっと隣で世話した後、
「おしっこするからあっち行って」と言いながらも、
オレがトイレから出る前にいきなりジーンズを下げて
「シャーッ」とやりだすMの姿に後ろ髪(なんてないが)を引かれつつ、
最終的にはパジャマに着替えさせ、ブラを外して差し上げた上、
コンタクトレンズも取って「溶液」などないので
「普通の水」に入れさせて、ほぼ万全の状態で彼女を寝かせる。
そこで出たのが、冒頭のセリフだというわけだ。
「トコトンまで付き合う」というのは、当然彼女と
「ヤる」ことまでも想定していたのだが、そんな姿を見てしまうと
気持ちも萎えてしまうわけで、実際まだまだ高いテンションの中、
眠れるはずもなく、仕方ないので横になったまま
「i-pod」で音を聞いていた。
そんなオレの行動を「褒めてもらおう」と、
K君を再び部屋に呼び「ヒソヒソ話」でミーティングだ。
結局、起きてからもまだ「ドロドロ」のMに、ごはんを作ったりして
「グーンパイ(行き過ぎ)」の優しさを発揮するオレに、
ついに悲劇が起こる。
烏龍茶と水しかない冷蔵庫を覗き、
「コーラが飲みたいよう!!」と言って聞かない彼女の為、
「ちょっと待って。買ってくるから」と、隣にあるコンビニ的な店で、
常温保存の冷えていない某「ペプシ」の1.5Lペットボトルを買って戻り、
ソファーに座り、グラスに氷を入れてブルーのキャップを捻ったところ、
「シュワーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」と、
ものすごい音を立てて中身のコーラが部屋中に飛び散ったのである。
あまりの出来事にどうすることもできず
1mmも動けないオレ。
「大噴出」がやっと収まった数秒後、思わず
「うわあああああああああああああ」と
情けない声を出すしかなかった。
見ればボトルの中身半分がなくなっており、
あたりには甘〜い香りが充満している。もちろん
テーブルも床もオレの服もめちゃめちゃコーラまみれだ。
「うーーーー。くっそーー腹立つ」と呟きながら処理をするオレの心に
(なんでこんな目に遭わなきゃならん!)と怒りが込み上げてくる。
そりゃたしかにオレが悪いさ。
変な「下心」を出したことだって、リズムをとって歩きながら
ペプシをちょっと揺らしたことだって、考えてみれば
悪いのは全部オレだ。
でも、これほどまで女子に優しくしているのに、
あんなヒドい仕打ちをしなくてもいいんぢゃないの。
それともこれは「警告」なのか?
未だに床の一部がネトネトするわ。
まったくもう。
昨日はひさしぶりにGさんの部屋に遊びに行き、そんな話をしつつ
最近調子に乗り過ぎのきらいがあるオレのことを、
「優しく叱って」もらおうと思ったら、やはり期待通りだった。
「いやしかし、イズミさんはホントに女子が好きなんですね〜♪」
と、とりあえずその部分の評価を受けた後
「ただ、遊び方にテーマがないのがアカン」と指摘され、
ベランダでウィスキイの水割りを散々飲みつつ考えた挙げ句、
「今までとまったく逆を行ってその結果真理を求めよう」ということで
「26才以上限定」というテーマに無事決定。
よーするに「そっち」を極めることにより、従来の好みである
「若いコ」の本当の良さを知る。という意味だ。
いや、実際(付き合った女子の)最高年齢が28才、しかも
当時自分が23才だったという経験値から考えれば、
その世代の女子のことをオレはあまりにも知らなさ過ぎるわけで、
ひょっとしたら本来の「オンナの魅力」に
バッチリと目覚めてしまう可能性だって充分あるし、
なんだったら、DVD屋さんの
「熟女コーナー」の棚に手を伸ばすオトコの気持ちが
理解できる日がくるかもしれない。
ちなみにLもMも26才。
なにも言わなくともさり気なく部屋の掃除をしてくれたり、
会話の内容がしっかりオトナだったりと、それなりに
よい部分があることは徐々にわかってきてもいる。
ここで一気に「ツッコんで」攻めることによって、
更なる魅力を発見できればしめたものだ。
ただ、ビックリするほど「老けるのが早い」タイガールのこと。
将来を考えた時の不安は否めないけどね。
そんなわけで、優しさ具合も「ほどほど」にしつつ、
「オトナ狙い」に切り替えることにしたオレだが、
果たしていつまで「保つ」のだろうか。
結果も含めて、
今のところまったく
予想もつかないのである。