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2010年3月11日 (木)

クワームラング

「懐かしぃ〜い♪」


誰もいない独りの部屋なのに、
ついつい声に出してしまった。

ちょっと恥ずかしい。

ひょっとして、
「見てはいけないものを見て」しまったのではないか。
そんな思いに駆られつつも、
画面から目が離せないオレ。

DVDのタイトルは
「想い出DVD」。

そう、自分の字で書いてある。


「う〜ん。何もやることがないなあ」

な〜んて思ったのがそもそもの間違いだ。
ブログは書きかけで進まず、レンタルのDVDは返したばかり。
誰からも連絡はなく、読みかけの本がないわけではなかったが、
長編ぢゃないから先が気になりもしないし、とりあえず
昨日電話に出なかったことを謝罪すべく、Aイちゃんに
「トーパイハー222212(電話する)」。

距離にして約四百キロだから遠距離と言えば遠距離だが、
「恋愛」と言えるのかどうかはまったく怪しいものだ。
「キットゥン(212恋しい)」と互いに言葉を交わし、
「再来週くらいに会いに行くわ」などと調子のいいことを言うが、
本気なのかどうかは自分でもよくわからない。

そんな中途半端な気持ちを振り払うには充分だった。

しかし、それが果たして
「良いことなのどうか」は謎だ。


「今日は一月八日で〜す」

画面に向かって喋っているのはオレ自身。
黒いキャップを被って赤い眼鏡をかけている。
今とまったく変わっていないではないか。

部屋のフローリングの床には植物の鉢がたくさんあって、
TV画面ではFCバルセロナの試合がやっている。

そんな「画(え)」を見つつ冒頭のごとく叫びながら、頭の中で
「二千何年の一月なのか」を必死で思い出そうとする。

「たぶん2007年だな」

てことは三年前か。
当時まだ四十一才のオレである。

部屋にはもうひとり女子がいて、彼女のことを
「姫」と呼んでいてるオレ。
画面に映りはしなくても一瞬で思い出す。

「うわ。恥ずかしいなあ」

「恥ずかし気」など一切なく、カメラが廻る間中一人で
「ずーっ」と話しているのだから、かなりの
「おしゃべりさん」だったのがよく分かる。
おまけにオンナのコのことを
「姫」って呼ぶなんて。

そんな自分がなんとも恥ずかしいのであるが、
実際ここにこうして書いていると言うことは自らを
「まんざら嫌いでもない」という証拠だ。

まあいいか。

「寒い」「昨日は雪が降った」などと某、森永
「アロエヨーグルト」を食べながら話し続けるオレ。
自分の声は思っているよりも少しだけトーンが高く、それがまた
「くすぐったい」というかちょっと照れくさい。

どうやら今から水族館に行くらしいが、
何故か電話を掛けてその後で解説が入る。

「何故電話をしたかと言うと今日は月曜日なんです。
普段公共施設は月曜日がお休みなのですが、
成人の日ということで祝日。やってます」

ソファーの横に座った姫嬢は、鼻歌混じりに
マスカラを付けたりしていて、なんだか
機嫌が良さそうだ。

ただ、照れてなかなか画面に映ろうとしない。

ここは人によって大きく分かれるところだ。自分のことを
「カワイイ」と思っている女子は、まず間違いなく
「映ることを拒みはしない」し、場合によっては
「自画撮り」をし出したりするからね。

そのうち、喋り始める姫。

けっこう鼻にかかった声。

そう。
この声が好きだった。

そーいえばオレって特徴のある声の女子が好きで、
特に鼻にかかったようなちょっと
「ザラッ」とした感じに「ヨワ」かったのだ。

途端に蘇る記憶。

それはオレの中での、一番近い
「ちゃんと恋愛した」記憶であった。

彼女以降に出逢った女子達とは、
「恋愛」と呼べる関係まで至らず、どちらかと言えば
「片想い」だったから。

「人を好きになる気持ち」を思い出して、タイに来てからの
「薄っぺらい恋愛」を呪う。

だから
「想い出DVD」なんて見るもんぢゃないのさ。


「想い出なんて捨ててしまえ」と、
オレに言ったのは彼女だった。

手紙や手紙のコピイや写真や日記など、言う通り
全て処分したのはしばらく後になってしまったが、
それで良かったと今は思える。

この後、実はちょっといいシーンがある。
水族館に向かう車の中で、その日彼女に渡した
手紙を目の前で読まれるところ。

「目の前で読まれるのは恥ずかしい」と言いながらも、
決して止めることはしないオレ。

途中漢字の間違いに気付く姫。
「素敵」の「敵」を「嫡」と書いていたようだ。

頭の悪さがバレて、さらに恥ずかしがる自分の姿を
まったく抵抗なく受け入れられるのは、ひょっとしてオレが
「M」寄りだからだろうか。

B.G.Mは「Jazztronik」。
姫はそれ系の音楽が好きだったのだが、ニッポンの
「オシャレハウス(?)」の代表選手だ。

ヴィデオカメラはコンソールの上中央に置いてあり、
左端にオレの顔、右端に姫の顔が七、八割映っていて、二人共
彼女が持っていた「飴」を舐めている。

ずっと真顔で真剣に手紙を読み進めていく姫の表情が、
少しづつやわらかくなっていったかと思うと、最後に
「ほんのり」笑うのだ。

その表情が、
自然な感じでスゴく良い。

当時のオレはまったく気付いていない。
運転しつつ「チラチラ」彼女の方を見てはいたが、
あんな顔をしていたなんて。

それくらいうっすらとした
「微笑み」だった。

「支離滅裂でしょ?」

照れ笑いしながらそう言うオレに
「ううん」と首を振って
「ありがとう」と言う姫。

正面に向き直ったオレの横顔を
「目を右に寄せ」て「1.5秒間」
「ジッ」と見つめる彼女。

その顔がまた良いのだ。

「コピイ撮らなくていいかなあ」
と言うオレに、目を瞑って首を振りつつ
「撮らないでいい」と、
「被せ気味」に答える姫。

唇を尖らせてオレは言う。

「忘れちゃうなあ」

それがハイライトシーンだ。


当然のごとく、
内容はすっかり忘れてしまった。

姫の望み通りに、である。

彼女だってそんな手紙、とっくの昔に
捨ててしまったはずだ。

しかし、オレはその時の
「DVD」だけ持って
タイに来てしまった。

そして、思い出す。

「ダメダメ」だったオレを救ってくれた彼女のことが、
すごく好きだった。

手紙の内容なんてどーでもいい。

「このヴィデオもすぐに消しなさい」と、
言っておくべきだったね。

あんな風に人を好きになることが、
果たしてこの先あるのだろうか。
タイガールのことをあれほど好きになれるかな。

考えても仕方ないね。


連絡の取りようもないし、
このブログも読んではいない
(であろう)彼女が今、
幸せであることを

心から願いたい。


*「クワームラング(2222122想い出)」

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