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2010年5月20日 (木)

アンタラーイ

「イズミサーン。ソトアブナイヨヒトシンダダヨ。デルダメダヨ!」


昨日の夕方、トゥルルと鳴ったアパートの内線電話に出ると
Aちゃんがそう教えてくれた。

後からわかったのだが、夜間のみではあるもののついに
「外出禁止令」が出たのである。
(難しいタイ語を使う)ニュースの内容がよく分からないだろうと、
親切に気を利かせてくれたわけだ。

「そこまで厳しい指令は出せないだろう」と、今までは
なかなか出なかったのだが、とうとう発令されたか。

案の定オレはそのことを知らず、いよいよ
「食べる物がなくなってきたのでそろそろ買いに行かねば」
と、思っていた矢先のことだったので助かった。
実際、昨晩はどこの店も閉まっていたと言うし、
タクシーも捕まらないほど街は静まり返っていたそうだ。

そして一部地域では、デモ隊の残党や暴徒による
「放火」や「強奪」「略奪」が行われたのである。


昨日の午後、某「UDD」首脳部が警察に出頭し、
「デモ終結宣言」をしたことにより、デモ隊の多くは
政府の出したバスで続々と田舎へと帰っていったのだが、
「終結」を不服とする一部の過激派連中は宣言を無視し、
ゲリラ的に活動を続けているようなのだ。

けっこうな人数と見られる彼らが散り散りになって、
反政府活動を続ければそれはまさしくテロであり、街中、いや
国中にテロリストが潜伏することとなってしまうわけで、
これはかなり危険(アンタラーイ22222)な状況である。

「UDD」には銃や爆破物などかなりの量の武器が
軍から横流しされたと言われ、実際それらを一度手にした人間が
異常な状況の中である種の狂気に至ったとしてもおかしくはない。

長期間座り込みを続けていたおばちゃん達にしても、
近くでドンパチやっているにもかかわらず
「何があろうとあたしゃここを一歩も動かないよ!」などと
インタヴュウに応えていたし、デモ終了で基地が撤収され
歩いてバスに向かう道中も皆わんわん泣いていたりと、
精神状態が普通であるとはとても思えなかった。

「これぞまさに<WAVE>の世界だな」

昨日観たばかりの映画のシーンに近いことが
現実に目の前で起きているのを、オレは
複雑な心境で見守るしかないのだった。


「THE WAVE('08独)」というその映画は、
1967年にアメリカで実際に起きた事件を元に
舞台を現代のドイツに置き換えて、若い監督が
自ら脚本も書いて撮ったものであり、なかなかに興味深く
とてもよくできた作品である。

「興味深く」とは個人的な意見で、それは
「ファシズム」についてのことなのだが、オレは以前から
このテーマには少し興味があったのだ。

内容は、ドイツのごく普通の高校の教師が
「独裁(制)」についての特別授業を受け持つことになり、
それを専攻したクラスの学生達に
「全体主義」を体験させる、という授業を進めるうち
徐々にエスカレートしていき、生徒達も、その
「指導者」である教師自らも常軌を逸し、
最後には悲劇が起こってしまう、というもの。

「(集団の)名前」「ロゴマーク」「制服」「敬礼」などを決め、
「助け合う」「行動力」ということを学ぶうち、それがどんどん
楽しくなりのめり込んでいく若者らは、やがて
自分達以外を排除し始める。

実際に起こったのはアメリカでのことだが、舞台が
ドイツだからこそリアリティーがさらに増して面白い。
そして、この
「ファシズム」こそニッポン人にピッタリというか、
国民の性質的には受け入れやすいのではないか、と、
オレは昔から思っていた。

とは言っても、もちろん
オレ自身が集団を煽動して何かを起こすつもりもないし、
とんでもないカリスマ独裁者が登場して、ニッポンが
「スゴイことになる」などとはまったく考ていないが、今のような
「超ユルユル指導者(未だに首相は鳩が付く人なのですか?)」が
アホなことばかり言っているニッポン国の姿を見ていると、
心の底でちょっとだけそういうことにも期待してしまうのを
抑えられないといったところだろうか。

とにかくだ。

今回の事件を見ている限り、
「赤服軍団」のメンバーがタクシン氏という指導者の元
「制服」を着て「目標」を掲げ
「一致団結」で「集団行動」といった姿が、
どうしても前出のそれに
「カブッ」ってしまう。

最初のうちは「お金」や「ごはん」が目的だったのに、
「タクシン!タクシン!」とシュプレヒコールをあげているうち
だんだんとマジになっていったり、
武器を持たされて役割を命じられてその気になったり。

その感覚がわからなくはない。

単純なオレなんて特に
「そうなりがちなタイプ」だと自覚もしているし。

とにかく、このタイミングでそんな映画を観たことが、どうにも
「偶然」とは思えないのである。

だからといってどうというわけでもないのだが。


「一度狂信的になってしまったらもう止まらないのでは」

そう考えると、今もそこらをウロウロしているであろう
「ゲリラ集団」は恐ろしくて仕方がない。

ビルに火を放ったり、消火活動を
銃で制止したりしている輩が、もし仮に
「これがお国のためなのだ」と思っているとしたら、
もうすでに頭がおかしくなっているのだ。

便乗して暴動に参加するような輩も含め、しばらくの間
タイの治安が不安定になることは間違いない。

昨日はなんと数十箇所で放火があったらしく、映像で見たが某
「セントラルワールド(伊勢丹含む百貨店街)」などは
火事でボロボロになってしまっていたし、街の中心である
「B.T.S」のサイアム駅も真っ黒焦げだった。

街の所々で黒煙がもうもうと上がっていたり、
装甲車が一般道をウロウロしていたり、TVのニュースで
そんなシーンだけ見ていると、まるで
「内戦」でも起こったかのようなイメージである。

街の復興にはかなりの時間と費用が掛かることだろう。
そしてもちろん、観光地としての信頼を取り戻すのにも。

国というものは、こういう経験を経て
成長していかねばならぬのであろうことはなんとなくわかるのだが、
数年前のクーデターといい、何度も起こるデモといい、
いつまた何が起こってもおかしくない状況は続く。

真の民主化への道はまだ遠いということなのか。

そんな中でオレはいったいどうすればいい。
オレの役割はなんなのだろう。

さっぱりわからない。


とりあえず昼間の明るいうちに
スーパーマーケットで食料を買い出しして来たが、
レジには恐ろしいほどの行列ができていて、皆
山のように食料品をカートに積み上げていた。

政府の発表した
「夜間(21:00〜05:00)外出禁止令」は
二十二日まで延長されたからね。

元々ヲタクで
「引き蘢りがち」なオレにとってはまったく問題ないが、
仕事を持っている一般の人達は大変だろうな。

ま、いろいろ考えさせられたが、今のところ狂信する
「カリスマ」もいないし、街で起こっている
「テロ」に加担する気もないので、どうか

御心配なく。

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