ナーソンヂャイ
「KERS」「DRS」
これらがいったい何のことか、皆さんは
お分かりだろうか。
タイに帰って来て、まず
「何をしたか」という話である。
今日で四日目だから、今やっている
「ブログを書く」については、プライオリティーが
さほど高くはなかったわけだが、それはまあ
仕方なかろう。何故なら
「日記形式」ではありつつあくまでもネタ、つまり何らかの
「テーマ」ありき、というこのブログの性質上
「ネタはあっても時間がなくて書けない」もしくは逆に
「時間はあっても書くようなネタがない」ということは
充分に起こり得るからだ。
というわけで、今回のその
「ネタ」に辿り着くまでの経緯を、せっかくなので
「順を追って」ご紹介しよう、ってなわけだ。
話の割には大したことのない某
シンガポールエアラインのサーヴィスにやや不満を覚えつつ、
スワンナプーム空港を出た途端、タイ独特の
「むわっ」とした空気を全身に浴び、
「ああ。帰ってきたんだなあ」と、心から
「ホッ」とする。
「近くて悪いね」と気を遣うオレに、笑顔で
「マイペンライ」と答えるタクシーの運ちゃん曰く、
「ツナミのせいでニッポンから部品が届かなくて、皆
ホンダの車が欲しくても買えないんだよ」とのこと。
世間話の中で
「最近(世の中は)どう?」と振ったらそう返ってきたわけで、
シンガポールではかなりバタバタしていたためか
ほとんど忘れていた震災の件を、急に思い出した。
ていうか
「車が買えない」ってことよりも、工場が止まって
「仕事がない」ことの方が問題なんぢゃないの。
日に日に渋滞がヒドくなる中、車なんか
「買えない」方がよほどイイ。
な〜んて言いつつ、オレ自身が
買っちゃったんだけどね。
ま、それはいいとして
「仏教の日」で祝日らしく、夕方にも関わらず道は
ヒジョーに空いていた。
ん。ちょっと待てよ。
「仏教の日」ってことは
「お酒ダメな日」なんぢゃないの。
「そーだよ。さすがに今日はどこもやってないね」
何だよ。久しぶりに
街に繰り出そうと思ったのに〜。
さて、丸丸一ヶ月空けてあった部屋で、まず
最初にしたこと。それは
「TVを点ける」だった。
何しろ、シェアさせてもらっていた部屋にはTVがなく、いや
TV自体はあったが繋がっておらず、一ヶ月もの間
「TV無し」で過ごした超
「TVっコ」のオレは、禁断症状が出そうなほどだったのだ。
おかげでいろんなものを見逃したが、もっとも
「イタ」かったのは、我が愛するスペインのサッカーチーム
「バルサ」のリーグ優勝シーン。いや、ライバル
「レアル」と対決したUEFAチャンピオンズリーグの準決勝
(ホームアンドアウェイの二試合)だろうか。
幸いなことにタイでは両方とも(ほぼ)無料で見られるので、
タイミング悪くこの時期に訪れなければならなかったのは
とても残念である。
どうせ行くならF1の時期が良かったのにな。
あ、そうだ。
F1を観よう。
「丸丸一ヶ月留守にした」ということは、よーするに
「丸丸一ヶ月分レンタルDVDのストックがある」ということ。
帰国前のオレは、これが
楽しみで楽しみでしょーがなかった。
「スポーツ(TV)観戦好き」だが、野球には
1ナノも興味のないオレとしては、サッカーの次によく観るのが
F1なのである。
エックスワイフがF1好きで
故アイルトンセナの大ファンだったこともあり、新婚旅行は
「F1モナコGP観戦ツアー」。
彼女からも多少影響を受けたのか、それ以来
ずっとチェックしている。
詳しいスケジュールは知らぬが、おそらくすでに観た
「オーストラリアGP」以来数戦は消化されているはず。
時刻は午後六時半。最終配達時刻の
午後八時にまだ間に合う。
郵便で届いている分のメニュウを眺めつつ、早速某
「D-STORE」に電話で注文。
第二戦は「マレーシアGP」。
「なんだよ。昨日まで隣にいたのにぃ」
そう。
マレーシアはシンガポールから
橋一本渡るだけで行けるのだ。
考えてみれば、タイに住んでいるのだから
F1をナマで観戦するチャンスは充分にある。
今回の件でシンガポールには多少コネクションもできたし、
もし、行けるなら観に行きたいなあ。
忙しくて店を手伝わされるだろうが。
そんな妄想をしつつ、ちょうど録画放送でリーガ前節の
「FCバルセロナ×デポルティボラコルーニャ」戦をやっていたので
それを観ているうちにDVDが配達された。
ちなみに、今年のF1は
メチャメチャオモロい。
タイ語で言えば
「ナーソンヂャイマックマークルーイ」。
主な理由は新たに(「KERS」は復活)導入された二つのシステム。
それが冒頭の二つの言葉
「KERS(運動エネルギー回生システム)」と
「DRS(可変リアウィングシステム)」なのだ。
これらによって、前を走る車を
「抜きやすく」なったことにより、レース中の
「バトルシーン」がものスゴく増えたのである。
簡単に説明すると、
「KERS」は、ブレーキ熱を利用して溜めたエネルギーを、
ボタンを押すことによりエンジンパワーにプラス(約80馬力)できる
「ブーストシステム」であり、一周につき約6.6秒間使える。
「DRS」は、リアウィングが閉じたり開いたりする装置であり、
長い直線で開けばマシンの空気抵抗が減って速度がアップし、
「スリップストリーム」にうまく入れば、直線の終わりで
前の車をぶち抜けるわけだ。
ただし、前車とのタイム差が
「一秒以内」に縮まっていないと使えない。つまり
「追いかける者の特権」となる(レース開始四週目から)。
後ろの車から追われているドライヴァーは、
「KERS」を使って逃げる。しかし、追いかける方は
「KERS」と一緒に「DRS」も使えるので、
うまくいけば抜ける。そして、
「DRS」は使える場所が決まっているのに対し、
「KERS」は一周するうちどこでも使えるので、
「肝心なところ」で残っていなかったりすることも。
そんなわけで、
「抜きつ抜かれつ」の激しいレースとなるのだ。
その代わりドライヴァーは大変。
ステアリングにはボタンがいっぱい付いていて、状況に応じて
正確に操作せねばならず、コックピット映像で
「カチカチカチカチ」ボタンを押しまくるのを見ていると、まるで
ゲームをやっているみたいだ。
もう一つ。
今年から替わったことで注目なのが
「タイア」。
昨年までのサプライヤー、某
「ブリジストン」社製は、あまりにも性能が良過ぎて
「摩耗」によってタイアがすり減っても
「グリップ力」が極端に悪くはならず徐々に落ちていったが、
今年からのイタリアメーカー某
「ピレリ」社製は、摩耗状況によって
「グリップ力」が急速になくなり、その分タイムも
「一周で二秒」とか、一気に悪くなる。
だから、ニュータイアに履き替えればやはり、
古いタイアの前の車に追いつけるし、やがて抜ける。
ただしタイア交換にはロスタイムが数十秒掛かるので、
交換を一回減らせば、黙っていても数十秒稼げるのだ。
何十週かのレースを走り抜く間、何度ピットに入るのか。
三回なのか、果たして四回か。
各チーム共タイア交換に関しては
「プランA」「プランB」を用意し、ドライヴァーによって
「戦略」を変えたりもする。
面白いことに、ドライヴァーによって
「タイアに優しい走り」の上手い下手があり、
「速いことは速いがタイアを痛めやすい」タイプもいるのだ。
これらの要素も絡み、特に今年はドライヴァー自身の
「腕」「堅実さ」「ファイティングスピリッツ」など、
「実力の差」が出やすいのも興味深い。
そんな中、我らがニッポン人の誇る
小林可夢偉選手は、マヂでスゴイ。
戦闘力の劣るザウバーのマシンで、前の車を
「ガンガン」追い抜き、しかも
「タイアに優しい走り」もできるのだ。
マレーシアGPでは、あまりにもスゴイので
「国際映像(現地TV局の制作するオフィシャル放送用)」も
カムイをずーっと映しっ放しだった。
そもそも、今まではニッポン人ドライヴァーが
「画面に映る」ことなんて滅多になかったし、特に
「タイア交換」のシーンなんてほとんど見たことなどないが、
彼の場合は何度も映る。
実際、それだけ世界中が大注目していることは確かだし、
そんな周囲の期待に見事に応えてみせてくれる
「頼もしいオトコ」でもある。
ひょっとしたら、フェラーリのような
「トップチーム」に移籍する可能性だって。
そう考えると、ものスゴく
「ワクワク」するではないか。
とにかく、見ていて本当に勇気づけられる。
ニッポン国民にとって
「スペシャル」な存在の一人であることは
間違いあるまい。
そして、何と言っても去年の王者
レッドブルチームのセバスチャンヴェッテル。
彼は速い。
ポールポジションを獲った後、マシンから降りて
カメラに向かって右手の人差し指を立て、
「ナンバー1」のポーズをするのがカッコいい。
個人的には、甘いマスクでめっぽう速い
メルセデスチームのニコロズベルグを応援している。
まだ優勝経験はないが、今年は初優勝のチャンスもあるので
是非頑張って欲しいものだ。
そんなわけで、タイに帰って来て早速
たっぷりとTVを見た後は、もちろん
ディスコにも行ったよ。
シンガポールの、オシャレでスカした
「クラブ(現地のニッポン人女子スタッフに
<ディスコ>に連れてって、と言ったら大笑いされた)」
なんかよりずーっと楽しい。
ただ、優先順位の最も上には
「ソファーに寝転がってTVを見ること」が絶対的にある。
オレがもっとも多くの情報を得て、且つ
「インスピレーション」を受けるメディアは、やはり
TVなのだ。
約一ヶ月
「抜いて」みて、そのことが
あらためてよ〜くわかった。
まだチェックしていない
「新作映画」もたくさんある。
しばらくは、
至福の時が
続きそうだ。
*「ナーソンヂャイ(322222)」は
「面白そうな、興味を惹かれる」の意。
| 固定リンク